中国の料理・人・生活や、中国のエリアのガイドなどをご紹介|中国の今と健康を伝える情報誌"チャイナビュー"

中国料理,中国の人,中国の生活,中国のエリアガイドを伝える情報誌です。

パンダの楽園を再建

2010.04.30

四川省のジャイアントパンダ保護区は世界自然遺産

 

 四川省には7ヵ所のジャイアントパンダ保護区がある。 なかでもブンセン県臥竜(がりゅう)自然保護区は1963年からパンダと森林生態系の保護区とされた地である。

 2008年5月12日の大地震で臥竜のパンダたちも多大な被害を受けたが、 現在では心と身体の健康を完全に取り戻している。 これは臥竜自然保護区管理局の張和民局長とスタッフの心のこもったいたわりと努力の賜物だ。彼らは昼も夜も常にパンダと一緒にいて、 共に遊び、心の交流を絶やさなかった。これには張氏の過去の経験から得たパンダとの付き合い方があった。

 1992年、 あるパンダが子どもを産むのに成功した。しかし、180日後、この赤ちゃんパンダは急死してしまった。 悲しみのなかで張氏はパンダ繁殖の障害はパンダの感情にあるのではないかと気づく。野生のパンダは単独行動を好む動物であるため、 それまで研究所ではパンダを檻に入れ、飼育係は朝の9時に出勤し、午後5時に退勤していた。これでは人とパンダ、 パンダとパンダの間にはいかなる感情の交流もない。そこで、張氏はパンダたちを共同生活させ、一緒に遊ばせ、自由に恋愛させ、 飼育係も交替で24時間面倒を見ることにし、 餌を与えるときは必ずパンダに話しかけることにした。

 「パンダも人と同じで、緊張するとホルモンの分泌に支障がおき、 病気にかかりやすくなります」と張氏はいう。実際、このような飼育を始めてからパンダの発病率は目に見えて下がった。

 しかし、 パンダは野生動物である。彼らと親密に接触するには大きな危険も伴う。1995年のある日、2歳の子パンダ《インイン》 に木登りの練習をさせていたとき、突然インインが暴れ、張氏のすねに噛み付き、3ヵ月間入院という重症を負った。

 「インインはそれでも手加減したつもりなのでしょう。そうでなければ、 今頃わたしの足は使い物にならなくなっていますよ」と張氏は笑う。そのインインは、 今では7組の双子を含む15頭の子パンダを生み育てた立派な母親となった。 

 

 

パンダ繁殖のためのハードル

 

 絶滅危惧種に登録されているパンダの繁殖には、発情がない、受胎が難しい、 子パンダの生育が難しいという3つのハードルがある。

 1980年代に臥竜で飼っていたパンダはたった10頭であった。

 1987年、 張氏は野生動物と自然保護区管理について学ぶために、アメリカのアイダホ大学大学院に留学。アメリカでは、 国内の野生動物の種の状況や生息地の変化などについて、科学者たちが知り尽くしているのに比べ、 中国では国宝であるパンダの研究があまりにも遅れていることに驚愕。2年後、 学位を取得した張氏はアメリカで学ぶ機会を捨てて中国に戻り、パンダの繁殖という難題に取り組むことを決心した。

 1980年代、全世界の研究機関が絶滅危惧種のパンダの繁殖に力を注いだ。 WWF(世界自然保護基金)は諸外国の専門家たちを集めて中国に派遣し、共同研究を進めたが、10年で1頭のパンダを生み、 育てただけ、それも2年で死んでしまい、成果らしい成果は上げられなかった。

 張氏とスタッフたちは、13年間に及ぶ忍耐強い研究の結果、 ついにパンダ繁殖の3つのハードルを乗り越えた。2010年2月現在、 中国のパンダ保護研究センターには155頭のジャイアントパンダがおり、世界最大のパンダ飼育所となっている。

 

 

パンダの楽園を再建

 

 四川大地震により大きな被害を受けたパンダ苑は世間に注目され、 各界から援助の手が差し伸べられており、特に中央政府、国家林業局、地方政府、香港・広東潮州などの地区からも援助の申し出があった。 現在では再建資金の問題はすべて解決しており、3年後の完成時には「都江堰(とこうえ) ジャイアントパンダ疾病コントロールセンター」 と「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」が臥竜自然保護区に建設される予定だ。

 完成後には、 総合的な機能が一体となり、センターには約100頭のパンダが飼われる予定である。

 さらにパンダ苑ではパンダの生息地を増やすため、 耕地を竹林に戻して生態系や植生を回復させる。その一方で、観光を発展させ、 地元の人々の生活水準を引き上げることにもつなげたいという。

 

 

パンダを野生に返す

 

 「わたしたちはパンダ繁殖の3つの高いハードルを乗り越えましたが、 今また大きな壁が目の前に立ちはだかっています。それは人工繁殖させたパンダを野生に帰すことです。 これこそがわたしの心からの願いなのです」と張氏はいう。パンダを野生に帰すのは、非常に難度の高い研究課題である。 人工繁殖に勝るとも劣らぬ難しい作業だが、これをやり遂げるという強い意志が、柔和な張氏の顔に表れている。