中国の料理・人・生活や、中国のエリアのガイドなどをご紹介|中国の今と健康を伝える情報誌"チャイナビュー"

中国料理,中国の人,中国の生活,中国のエリアガイドを伝える情報誌です。

独特の街並みや生活、文化を育んだ 北京の四合院

2010.02.28

独自に発展した北京の四合院

 

四合院とは、 中庭を囲んで東西南北の棟が建てられた様式の住居で、漢民族独特のものであり、中国の多くの地区に建てられていた。史書によれば、 西周時代にはこのような庭を囲む建物様式がすでに存在していたが、都市の規模が小さいため、目立たなかったと記されている。

漢代以降になると、人口が増え、都市としての規模が大きくなり、 街全体に縦横の道路が通されたことから、それぞれの方形の区域に四合院様式の住居が建てられるようになった。

金・ 元代に北京が都となり、大規模な都市建設が始まった後、北京に四合院様式が定着し、宮殿や役所から庶民の住居まで、 胡同と四合院という形式を基本にして造られた。北京の四合院は、他の都市では見られない特色を帯び、独特な発展をしてきたものである。

また四合院は、 先人の知恵が生きる優れた空間として見直され、現在、 市内には四合院を使ったカフェやその考え方を取り入れたホテルなども現れている。 心落ち着く四合院は、 ノスタルジックでありながら現代的な感覚にもマッチし、市民の憩いの場として人気を呼んでいる。

 

 

中庭を囲む家、 四合院

 

現在、 北京にある四合院の多くは清代に建てられたものである。市街にある典型的な四合院は、東西に走る路地・胡同の両側に南向きに建てられ、 大きな四合院の中にはいくつもの中庭がある。四合院は普通、南北の中軸線に沿って左右対称に建てられ、北にある部屋が正室で、 東西にある部屋が脇室となり、南の部屋は戸を北に向けているため、倒座(逆さに置かれるの意味)と呼ばれる。

四合院の表玄関はほとんどが八卦の「巽(そん)」(東南) の位置に置かれている。基本的に窓のない外壁に囲まれ、外部と遮断されているため、安全で家族のプライバシーが守られ、 一家が静かに暮らすには非常に適している。

 

 

住まいからうかがえる中国の伝統

 

四合院の建築スタイルや配置には、中国伝統の「礼」や「孝」 といった観念がうかがえる。住む部屋の配分には厳しい規定があり、最も上位にある北の正室には、年長者である祖父・祖母 (または曾祖父・曾祖母)が住む。その中央には居間が置かれ、一家が集まったり、親戚や友人を招いたりする。 年中行事の際には祖先を祀るところでもある。

 東西の棟は子どもたちの部屋で、長男は東部屋、次男は西部屋に住む。 南棟には台所や食堂、客室のほかに、雇い人たちが住む場所もある。建築規模が中クラス以上の四合院は縦に二つの四合院が組み合わされ、 独身の女性は後方の四合院に住み、その四合院には二階建ての建物が多い。

 規模の大小に関わらず、四合院ではそれぞれの部屋がみな独立し、 部屋ごとにプライバシーがあるが、ドアや窓は中庭に向けて開かれ、家族同士のコミュニケーションが楽しめるようになっている。

 大きな四合院の多くには、ザクロ、カイドウ、 リンゴなどの果樹が植えられている。秋に沢山の実をつけるこれらの樹木には、子どもが多く生まれ、 無事に育つようにとの願いが託されている。また、中庭では魚や鳥が飼われたり、大小の石などが置かれており、 自然の景観を楽しむことができるようになっている。

 

 

建築としての四合院

 

四合院の設計や施工は比較的シンプルで、建築材料は灰色のレンガ、瓦、 梁となる木材だけである。その構造は建築力学にかなったもので地震にも強い。木組みには、 ほぞなどを使った伝統的な木造建築技法が使われており、木製の格子窓から中庭を眺めることができる。また、建物は灰色を基調とし、 床には灰色のレンガが敷きつめられている。

玄関が巽 (東南)の位置にあるのは風水の思想「坎宅巽門(かんたくそんもん)」によるもの。ほかに、部屋の調度品の配置、装飾の方法、 庭木にも多くの決まりごとがあり、例えば庭木なども、エンジュ、クワ、マツ、コンテガシワ、 ポプラの木などは縁起が悪いとされ植えられない。

一部の四合院の入り口には目隠しや魔除けのため、 影壁と呼ばれるレンガ造りの壁があり、「松鶴延年(長寿のシンボルの松と鶴)」「喜鵲登梅(梅の枝に登るカササギ)」「麒麟送子 (子授けのキリン)」など縁起のよい図案、あるいは「福」「禄」「寿」などの文字が書かれ、家にめでたい雰囲気を添えるほか、 外界と内部を隔離する役割も果たしている。

 また、 四合院の装飾や彫刻、彩色絵画にも民俗や伝統文化の要素が盛り込まれ、人々の幸福・美・富・吉祥への願いを表している。例えば、 コウモリと寿の字からなる図案は幸せに長く生きることを象徴し、コウシンバラの花が挿さった花瓶の図案は「四季平安」を意味する。

 戸の枠に貼られた縁起のよい言葉、柱に貼られた対聯(ついれん)などは、 山水の美しさを詠んだり、処世訓が記され、中国古来の文化的雰囲気を醸し出している。

普通の四合院の門の扉にも、よく「忠厚伝家久、詩書継世長(忠厚、 家に伝わること久しく、詩書、世に継がるること長し)」などの伝統的な価値観を示す対聯が貼られている。

 こうして、 四合院に住む北京の人々は、幼い頃から、昔からの言い伝えや道徳観念を自然に身につけていく。

 

 

四合院に住む人々の生活

 

 北京では、一部の四合院はすでに高層ビルに取って代わられているが、 一部は建て替えられ、保存されている。

保存されている四合院に住む一人である李さんは、四合院で生まれ育ち、 結婚して子どもを育て、今は孫もいる。

太極拳が得意で、70歳になった今でも、 ある会社で警備員の武術コーチとして活躍している。

規則正しい生活を送る李さんは、毎朝6時に起き、中庭で拳術の練習をする。 余暇は隣人たちと世間話に花を咲かせたり、将棋を指したり、鳥や動物の世話をしたり、草花の手入れをしたりする。

週末には、 結婚した娘が夫と孫娘を連れて訪れ、李さん夫婦、息子夫婦と孫息子、娘夫婦と孫娘の一家8人で楽しい団らんのひとときを過ごす。

これが北京の四合院に住む人々の一般的な生活である。