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中国古代四大美女「西施」を祭る「西施文化祭り」

2009.11.30

呉越の覇権争いに利用された西施の生涯

 

中国歴史上の四大美女の一人である西施がどれほど美しかったかという言い伝えによると、 西施が川で洗濯をしているとき、水中の魚が彼女の姿に見とれて泳ぐのを忘れて、水底に沈んでしまったという。そのため、 後世の人は西施を「魚も沈む容貌」と讃えた。

 西施の本名は施夷光(しいこう)という。春秋時代に浙江省の諸曁苧蘿 (しょきちょら)村(現在の諸曁市城南浣紗村)の貧しい農家に生まれた。苧蘿(ちょら)には東西二つの村があり、 西の村に住む夷光は西施と呼ばれた。生まれつき美貌の西施は、病の時に、眉をしかめ胸を押さえて歩く様子さえもが美しかった。 隣村の東施という醜い女はそれを真似て眉をしかめ胸を押さえて大袈裟に振舞った。その様子は人々の失笑を買い、のちに「西施の顰 (ひそ)みに倣う」(むやみに人の真似をするのは愚かなこと)という故事になった。

 

 前494年越王勾践(こうせん)は呉王夫差(ふさ)との戦いに敗れ、 呉国の人質となった。数年後に釈放された勾践は家臣の範蠡(はんれい)と共に、 呉王夫差の女色を好む性格を利用して呉を陥れる策を練った。そして、白羽の矢が立ったのが西施であった。

 越の宮中では、美人の条件を、一つは美貌、二は歌と踊りに秀でること、 そして最後に立ち居振る舞いの姿が美しいこととしていた。西施は第一条件にはあてはまったが、そのほかの二つの条件を満たすため、 3年におよぶ苦しい訓練を経て、洗濯女から教養ある宮女へと変貌を遂げ、呉国に送られた。

 勾践の目論見どおり、夫差は西施を溺愛した。蘇州に「春宵宮」を建造し、 大きな池を作り青竜の形をした船を浮かべ、日夜を問わず西施と水辺で遊び、また、西施のために歌舞や宴会を行う館娃閣(かんあいかく) や霊館などを造営。さらに木靴や鈴を鳴らして踊る舞が上手な西施のため、 100個の大瓶を埋め込んで靴音や鈴の音がよく響くようにした廊下「響屐廊(きょうげきろう)」を造らせた。 こうして夫差は政治をおろそかにし、呉国は亡国への道をたどった。

 

 呉が滅んだあと西施の消息は不明だ。伝承によると、 生きたまま皮袋に入れられ長江に投げられたとか、範蠡(はんれい)に助け出され、 船で五湖を漂流したとか言われるがその後を知るものはいない。

 

 

人々の生活に生き続ける西施

 

 現在もなお、 西施の美貌と知恵、人柄、愛と献身などは語り継がれ慕われている。そうした民間の伝承文学、 すなわち「西施伝説」は長い時を経て、物語やことわざ、習慣など、人々の暮らしのなかに根を下ろしている。

 西施が越から呉に入った道沿いの建築物・遺跡にも、 南は諸曁から北は蘇州まで、西施ゆかりの遺跡が残されており、それらは「西施文化」と呼ばれ大切にされている。

 例えば、 杭嘉湖一帯では西施は蚕の神様として崇められている。これは、西施が船で呉に赴く道中のお供をしたのが、 養蚕の盛んなこの地の桑摘み女たちだったので、西施は彼女たちに感謝し、桑の豊作を願い、蚕を贈ったことに由来している。

 また、 諸曁一帯では麻の栽培と織布が盛んであった。子ども時代の西施も村人とともに麻を刈り、それを洗って麻布を織り上げていたことだろう、 ということから、麻布も西施文化の一つに数えられている。

 

 

「西施」 は美の代名詞

 

 中国では 「西施」は美の代名詞だ。例えば、美しいフグを「西施魚」と呼び、フグの白子もそのおいしさから「西施の乳」と呼ばれる。 きれいな花は「西施花」。また女性の美しさを西施になぞらえて「恋人の目には西施に見える」というような諺もある。 この地域の特産品に「西施」の名が付けられていることも少なくない。

 

 

世界が認めた無形文化遺産

 

 約2500年もの間、民間で語り継がれてきた西施文化の伝統は、 山間や水辺の村で守り伝えられ、この地の人々の貴重な財産となった。「西施伝説」は、2006年に世界無形文化遺産に登録された。

 これを記念して「諸曁西施の故郷観光区」が設置され、同年、 第一回西施文化祭りが4月20日から10日間開催された。

 これは文化・ 観光を総合的に推進し、諸曁市の知名度を高めると共に、経済的な発展を目指そうという地域の取り組みである。

 世界無形文化遺産登録という快挙をきっかけに、西施とその伝説、 関連文化を後世に伝え、広く世界に伝えていこうという「西施文化祭り」は今後毎年4月に開催される。地域の文化祭りとして、 より一層発展していくことだろう。

西施をしのび、川に灯篭を流す模様