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洋県の民俗的祭り 「掃五窮(そうごきゅう)」

2009.10.31

5つの災いを追い払う祭り

 

 古代、 センギョク(伝説上の古代の皇帝)の時代に、ある宮女が男の子を産んだ。その子は小さく弱々しく、風貌もぱっとしなかった。 彼は小さいころからぼろの服を好み、新しい服を与えても手で引き裂いてぼろぼろにして着、食べ物も粗末なものを好んだので、 宮廷の人々は皆、彼のことを「窮子(きゅうし、貧乏っ子)」と呼び、疎んじた。成長したのち一人暮らしを始めた窮子に、 宮廷の人々は喜んで彼を送り出し「今日、貧乏を送り出した(送窮子)ので、今後の生活は豊かになるだろう」 と喜び合ったという言い伝えがある。

 のちにこの 「送窮」が、次第に邪、怪、災、病、貧という5つの災いを祓う「掃五窮」という儀式へと変化して、 陝西省漢水上流域の洋県やその周辺地域で現在に至るまで伝えられている。

 「送窮」は、掃五窮、掃五魔、掃五群ともいわれ、 現在では大衆娯楽芸能の一種となっている。

 掃五窮には一般的に5~7人、あるいは9~11人が参加し、 彼らは黒ひげの霊官、赤ひげの霊官、土地爺、天官などの道教の神さまに扮する。 なかには孫悟空やナタなど民間に伝わる物語の登場人物に扮したりもする。

 神々は一人ひとりそれぞれに役割がある。 例えば赤と黒の霊官は雷で災いや邪悪なものを門の外に追い出すという門を守る門将として家を守る。

 「黒の霊官」はお金を司ることから人々は「財神」と呼ぶ。

 「土地爺」は案内人としての役割がある。気候を順調に保ち、 五穀豊穣を司り、家や商店の主人のために貧困払いをする。

 「天官」は福をもたらし、掃五窮の神々のなかでも主神の地位にある。 「孫悟空」はその正義と非凡な武芸で掃五窮のなかでも保護神の役割を果たし、「ナタ」は勇気と知恵と孝行を象徴する。

 「送子娘娘」という女神は子どもを授けるとされている。

 送窮が行われる日は特に定められていなかったが、 のちに正月の5日に定まった。民間では、毎月の5日・13日・24日は不吉な日といわれ、 新春の5日目にあたる正月5日は特に不吉であり、これを祓うことで順調な一年を迎えることができると考えられている。

 

 

村の 「掃五窮隊」が邪気を祓う

 

 掃五窮の儀式により、東、西、南、 北そしてまん中の5つの方位の邪気を破れば、5つの災いを祓うことができると考えられている。

 千人以上いる村では、送窮の日の明け方に掃五窮隊が結成され、 ドラや爆竹を鳴らし、土地爺の先導で村を一巡する。 彼らが家や商店の前に来ると、人々は爆竹を鳴らし、線香や蝋燭を灯して歓迎する。赤と黒の霊官が武器を手に門の両側を守り、 同時に諸神が中になだれこみ、手にした神器で家の中を清める。

 彼らに続くドラ隊は門の外で耳もつんざくばかりの大音響でドラと太鼓を打ち鳴らす。 家の主人は神々に感謝を捧げ、おひねりを渡して苦労をねぎらうという手順だ。

 村を練り歩く最中に子どもや老人にあったら、彼らから病や邪気を祓う。また、 門の前に自動車やオートバイが止っていたら、それらも清めて交通安全を祈る。

 新婚の家には送子娘娘が新婚夫婦の部屋に入り、 新婦のために子どもが早く授かるように祈る。

 村中を巡る掃五窮の祭りも正午を過ぎるころには終わりを告げる。 より多くの人に幸せを授けるために、それぞれの家に長居はしない。儀式は1軒に5、6分といったところであろうか。

 行事が終わると、神々に扮した掃五窮隊の一同は、大人も子どもも輪になって、 もらったおひねりを集めて計算し、食費などの必要経費を差し引いた残りのお金は来年の掃五窮の道具や衣装、 ドラなどの購入費用にあてる。

 これは村の行事のため、掃五窮隊の人々への報酬はなく、 住民の持ち回りで参加するというのが、洋県の村の掃五窮である。