土地の神を祭り、悪鬼を払う
中国の西北地区、陝西(せんせい)省宝鶏(ほうけい)では、旧正月の期間、 古くから伝わる祭りの一つ「社火」がにぎやかに行われる。宝鶏に残る記述によれば、先秦時代にすでにこの祭りが行われていたという。
社火は、 民間で行われた鬼やらいの一つである。鬼やらいとは古代中国に始まった、神を迎え悪鬼を追い払う原始宗教の儀式を指す。古代の人々は、 大自然の脅威に対して力を持たず、人知の及ばぬ神霊が存在すると信じていた。それらは善と悪に分けられ、 神や鬼という観念が生まれた。 人々は神を崇め鬼を払うため、仮面を着けて神や鬼を真似、邪気を払う祭祀を行うようになった。 この仮面が隈取りに変化し、 さらに発展した祭りが社火と考えられている。
かつての人々は「社」にはその土地の神が存在しているものと考え、 豊作や厄災よけのために社神を祀った。
火は赤く 「にぎやか」という意味を持つ。
商周時代には宮廷でもこれらの厄払いの祭祀が行われており、 それは一種のシャーマニズム的な踊りであった。『楽府雑録』には、人々が冠や面をつけ、熊の皮の衣装を着て、鉞(まさかり) をとり盾をかかげて、祈りを唱えながら室内のいたるところをめった打ちし、悪鬼を追い出そうとしたことが書かれている。
宝鶏の「社火」 は無形文化財
社火の出し物はさまざまで、高足踊り、獅子舞などのほかに、 歴史物語や伝説の芝居などもある。
隈取りは、 昔の仮面や舞台化粧の名残であり、宝鶏の隈取りは中国でも最古のものの一つである。 これらの模様には殷商時代の青銅器に見られる饕餮紋(とうてつもん)などの図案もあり、 これらの時代の文化の名残であると考えられている。
現在、 宝鶏で行われる社火は中国の旧正月の代表的な文化イベントとなり、黄土高原の熱狂的な祭りと呼ばれ、 中国の無形文化財に指定されている。



