鬱の解消は、「気・血」の流れをスムーズに
中医学の「鬱証」は範囲が広く、自律神経失調症、神経症、 不安症、更年期障害など、多くの疾患が含まれます。重く受け止めがちな症状ですが、 鬱証についてまとめた古典の医学書があるほど一般的な症状で、二千年もの昔から専門処方が数多くありました。
鬱は、体内で何かが「鬱結(うっけつ)」した状態、と中医学では考えます。 気、血、痰、湿、熱、食の鬱結が鬱の原因となりますが、中でも「気」と「血」がポイント。健康を保つためには、 生命のエネルギーとなる「気」と、心身に栄養を与える「血」が必要不可欠です。この気・血の流れが滞ったり(鬱結)、 不足したりすると、心のトラブルが起こりやすくなるのです。
ストレスが鬱の原因となるのは、気・血を全身にめぐらせる「肝」 の機能がストレスの影響で低下し、流れが滞ってしまうから。このような状態が長引くと、体内の気・血の不足にもつながり、 さらにストレスへの対応力が弱くなってしまいます。
「心と身体は全体で一つ」とする中医学では、このように、 鬱の原因は心だけでなく、身体の中にもあると考えます。不規則な生活や偏った食事なども気・血不足の原因となるので、 まずは規則正しい生活を心がけ、身体全体のバランスを整えていきましょう。
身体のバランスを整えて、心のトラブルを上手に解消
鬱の原因は、ストレスだけでなく身体の中にもあります。 まずはその原因を知り、改善していくことが大切。身体のバランスを整えながら、心のトラブルを上手に解消していきましょう。
最も多い初期症状「肝気鬱結(かんきうっけつ)」 タイプ
気の流れをスムーズにして、早めに改善
「肝」はストレスを発散させ、 精神や感情をコントロールする役割を担っています。しかし、憂鬱や怒りといった精神的なストレスを強く受けると、 この機能が低下し、気の流れが滞ってしまうのです。これが「気鬱」の状態で、初期の鬱症状の原因に。
気鬱の状態が長引けば、熱っぽい症状が現れる「熱鬱」、 血の流れが滞る「血鬱」、脾胃の消化機能を低下させ、食・痰・湿の停滞が起きる「食鬱」「痰鬱」「湿鬱」 といったさまざまな症状につながります。
五行学説では肝は春にあたります。樹木のようにのびのびとし、 発散することを好む臓腑。ストレスを発散し、停滞した気の流れをスムーズにすることを心がけてください。症状が重くなる前に、 なるべく「気鬱」の段階で改善できるよう身体を整えましょう。
お薦めの食材: 金針菜、ねむの花、キンモクセイの花、ライラックの花、ジャスミン、ミント、酢、あわび、牡蠣、 ふきのとう、ふき、竹の子
※花類はお茶で楽しみましょう
よく使われるのは:加味逍遙散、開気丸、 柴胡加竜骨牡蛎湯
余分な水分や汚れが溜まる「痰湿停滞 (たんしつていたい)」タイプ
溜まった痰湿を取り除き、身体をすっきり
「肝気鬱結」タイプでお話したように、気の流れの停滞は脾胃にも影響し、 消化機能の低下につながります。その結果、常に体内に痰湿(余分な水分や汚れ)が溜まるようになり、精神的な症状に加えて、 胸がモヤモヤする、痰が多い、のどの閉塞感、悪心、食欲不振といった症状が現れるのです。また、ストレスからくる暴飲暴食、 油っぽいものの過食などが痰湿の原因となることもあるので注意しましょう。
このような症状が気になる場合は、胃腸の機能を改善しながら、 尿と便の排泄を良くすることが大切。痰湿を取り除くことでさまざまな身体の症状も回復しやすくなり、 基本的な健康づくりにもつながります。気の流れをスムーズにするとともに、余分な痰湿をすっきり取り除くようにしてください。
お薦めの食材: 陳皮、しそ、大根、はと麦、もやし、冬瓜、きゅうり、バナナ、イチジク、キウイフルーツ、 ウーロン茶、プーアール茶
よく使われるのは:半夏厚朴湯、星火温胆湯エキス顆粒、 焦三仙
心と身体の元気が足りない「気血不足」 タイプ
気・血の不足で、
ストレスの影響を受けやすく
同じようなストレスを受けても、すぐに解消できるときもあれば、 落ち込みやすいときもあります。これには、気・血の状態が大きく関わっています。
「気」は生命のエネルギーであり、「血」は「心」の栄養。 心身ともに健康で気・血が十分にあれば、ストレスに負けることはありません。反対に、「肝気鬱結」の状態が長く続き、気・ 血をつくる「脾」の機能低下、「肝」が蓄える血の消耗、精神活動の中枢「心」の血不足を招くと、身体全体の気・血が不足。 精神が不安定になり、ストレスの影響を受けやすくなってしまいます。
憂鬱や情緒の不安定などの症状に加え、動悸や不眠、不安、健忘、めまい、 疲労などを感じる人は、気の滞りを解消しながら、足りない気・血を補うようにしてください。
また、病後や産後、更年期など、体力を消耗しているときにも気・ 血が不足しがちなので注意しましょう。
お薦めの食材: 黒ごま、松の実、百合根、小麦、なつめ、ぶどう、クコの実、鶏のハツ、スッポン、大豆製品、 鶏のハツ、スッポン、大豆製品、小松菜、ほうれん草、にんじん
よく使われるのは:麦味参顆粒、甘麦大棗湯、 婦宝当帰膠
さわやかな春の陽気を楽しんで、気分をリフレッシュ
食養生や中成薬で身体を整えていくことはもちろん、 日常生活の中でストレスや疲れを溜めない工夫をすることも必要です。
まず、生活リズムを守ることが大切。深夜までテレビを見たり、間食することは避け、規則正しい生活・
食事を心がけましょう。家に閉じこもらず、なるべく外に出て身体を動かすようにしたり、お風呂でリラックスしたり、
趣味を見つけて楽しんだり。そんなちょっとした習慣も、ストレス発散につながります。暖かい春の朝は、散歩にもぴったりです。
新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで、心も身体もリフレッシュしてください。
中医学では「およそ病は、鬱にて起こること多し」といわれ、 鬱は多くの病気の始まりと考えられています。心の元気は、身体の元気の源、ということですね。元気が出ない、気分が沈みがち、 何か変だな、と感じたら「鬱」かもしれません。“心身の健康を見直して改善する機会”と考え、早めに対応していきましょう。



