緑と水に恵まれた大草原
雪を頂く山々に囲まれ、見渡す限りに大自然が広がるバインブルク草原。まるで緑の絨毯に織りこまれた真珠のように、放牧された牛や羊、
馬の群れがのどかに草を食む。草原は海抜2000?2500mにあり、面積は2万3000平方メートル。
中国一広い高山草原である。
バインブルク草原には、帯のように川が流れ、良質の牧草が60万頭の牛や羊を育み、 新疆の牧畜業地域の一つとなっている。バインブルクでは、天山のヤク、チャトウの羊、イェンチの馬が三宝とされている。 バインブルクのヤクは青海チベット高原が原産で、寒さに強く働きもののため「高原の舟」と呼ばれる。 トルグート人が最も誇りにしているのは「トルグート人の翼」と呼ばれるイェンチ馬で、千里を走るという駿馬である。 イェンチ馬は大型で逞しく厳しい環境に耐えるので、トルグート人に欠かせない足となっている。
バインブルク草原の中心には、長さ約30キロメートル、 幅約10キロメートルにわたり大小さまざまな湖沼がある。 紺碧色の湖の水面に、雪を頂く山や青い松、咲き乱れる花々などが映え、美しい風景を織り成している。湖に浮かぶハクチョウは、 白い帆を張った舟のようで、悠然と波と戯れている。これが名高いバインブルク自然保護区の天鵞(ハクチョウ)湖である。ハクチョウは、 日が昇るころ、首を翼の下に埋めて地面に腹ばいになったり、片足で草陰に立ったり、水面に浮かんだりして夢の世界に入る。 夕暮れはハクチョウが餌をとる時間で、湖で素晴らしい「水中バレエ」を踊る。バインブルクの天鵞湖には、 一万羽余りのハクチョウと128種の鳥類が生息しており、中国最大の野生ハクチョウの生息地で、渡り鳥の夏の繁殖地である。
バインブルク草原には、避暑やリゾート地として利用されるコンナイス森林公園がある。ここには、氷河と万年雪を頂く山やコンナイス河、 数えきれないほどのパオや羊の群れなど、美しい風景が広がる。

遊牧生活を送るトルグート人
トルグート人はモンゴル族の一部族で、ケレイト部族の子孫とされている。1203年、モンゴル草原のモンゴル部族は、ジンギス・ ハンに率いられて強大になり、ケレイト部族を打ち破って西方への遠征軍に組み入れ、さらにその一部を自らの護衛部隊とした。こうして、 ケレイト部族はモンゴル部族の一部となり、モンゴル部族による草原統一後、「モンゴル」の名前は草原各部族の通称となった。 後にケレイト部族の末裔がトルグートと名乗り、モンゴル高原の有力な部族の一つとなった。
1630年、部族間の争いなどによって西に移った25万人のトルグート人は、 再び集合してボルガ河とエムバ河の間の広い草地に移った。ここは、彼らへの脅威が少なく、水と草が豊かな上、気候も温暖で、 移住に適した土地であった。同年、ここに新しい遊牧国家を築き上げた。
しかし、続く140年間、勢力を拡大したロシア帝国が、自分たちの国籍に入ることやロシア正教を信仰すること、 毎年数万人を兵として差し出すことなど、絶えず要求を突きつけた。1770年、16万人のトルグート人は、 ロシア人の厳しい支配に耐えきれず、民族の存続を求めて東の祖国へ帰る旅に出た。途中、ロシア軍の追撃や飢餓、 疾病などが彼らを襲い、祖国に戻ったときにはわずか6万人しか残っていなかったという。当時の清政府は、 バインブルクの地を彼らに与えた。今日、バインブルクで生活しているモンゴル族は、ほとんどがそのトルグート人の子孫である。
今日のトルグート人は、依然として伝統的な生活習慣を保っている。パオは、丈夫で冬は暖かく夏は涼しいトルグート遊牧民の家だ。 地下に30センチほど埋められた数十本の木で骨組みを作り、 その上に傘状の木の屋根を被せる。骨組みと屋根の間にハネガヤの簾をたらし、そして内壁にきれいなフェルトを掛ける。 パオの外にもフェルトを掛けると屋根と壁ができあがる。パオを丈夫にするために、外周を20本の太い荒縄と地下1mの深さに打ち込んだ杭でしっかりと固定する。 こうして作られたパオは、草原の厳しい吹雪や砂嵐にも耐えることができる。パオの天井の真ん中には、 直径60? 80センチの天窓が開いていて、 風通しを良くし、排煙の役割を果たしている。パオの高さはほとんどが2.5? 3.5mだが、 直径は4?8mと大きさは大小さまざまだ。
トルグート人の生活で最も大切なのは、年に2、3回の移動である。4月には広い夏の牧草地に移り、11月には、 草が高く生い茂り風が避けられる牧草地に移る。家畜が増えれば再び場所を変える。引っ越しのとき、男たちは家畜の世話をし、 女たちはお年寄りと子どもの世話をする。朝、まだ暗いうちに下準備を済ませ、日の出とともに出発し、午後3時には目的地に着く。 パオは、夜、寝るまでに作り終えなければならない。
牛や羊の放牧、買い物など、トルグート人の生活に馬は欠かせず、どの家も数頭の馬を飼っている。馬の背で育った彼らは、 馬に特別な感情を持ち、暴れ馬を調教することを最も誇りとしている。それはまた、彼らの知恵と勇気を示す機会であり、 そのためトルグート人は「馬の背の鷹」と称えられている。家に駿馬がいることは明るい前途があることを意味し、駿馬がいれば遠く駆け巡り、 子孫の代まで明るい未来を創りだすことができると彼らは信じている。



